2018-11-02
育成

生活から研ぎ澄ませ

周りを見るという事

スクールの練習終わりに、駐車場で子供たちとゆんたく(沖縄の方言で世間話をするような感じ)をすることもあります。子供たちが帰った後に、ふと見ると忘れ物が落ちていたり、携帯や財布をそこらへんにポンと置いたままにして、それが視界に入らないようなところで遊んでいたりすることが多々あります。平和だな、というか治安がいいというか。いいことではあると思います。

最近サッカーシーンで認知、判断(分析)、選択(決断)、実行という言葉が良く使われるようになってきました。

『認知』事前にボールがない時に、周りの状況を見て把握する事
『判断(分析)』周囲の状況を把握してから、次に自分がどんなプレーをするか考え、プレーを選択
※選択は別にしたり、実行の前に改めてやり直すこともあります。ここまではスクールやコラムでもよくお伝えしていることではあります。

メキシコでの生活

20代のころ、1年間JFAのプログラムの一つとして、メキシコへコーチ留学をしていました。午前はスペイン語の学校、午後は指導者養成学校、またはサッカーチームの指導(またはプレー)をする日々でした。

メキシコでも割と治安がいいとされる、メキシコシティに次ぐ第二の都市、グアダラハラという町で過ごしました。ここはプロサッカーチームが三つもある、とてもサッカーが盛んな町でした(どこでも盛んではありますが)。

家の近所には地面はアスファルト、周りは金網に囲まれたやや小さめなフットサルコート程度のグランドがあり、近所の子供から、大人までがローカルルールで試合をする、まさに『ストリートサッカー』をする場所がありました。

そこでの生活が長くなると、当然顔見知りも増え、気心の知れた友達も増えますが、まだ馴染めない、もしくは知らない人もいます。

サッカー場に車や自転車、または徒歩で来ている人もいますが、みな一様に、必要最低限のものだけを持ってきて、自分がプレーするときにはコートの目の届く範囲、もしくは信頼できる友達に預けてプレーします。

私がいた一年の中で、そこでものが盗まれることは一度もありませんでしたし、盗まれたひともいませんでした。それでも、彼らの生活のなかのルールとして、自分のものは自分で管理、なくなってしまえば半分は本人の管理不足、という風潮がありました。

もし目の前に財布が落ちていたら、神様が自分にくれたんだ!といって持ち帰る、という話が日常にあるくらいです。良し悪しは別にして日本とは意識、認識に違いがあります。

自分のものは自分で守る

メキシコに行き、三カ月ほどしたある日、生活にも慣れてきてすこし油断があったのもあります。夜道を一人で歩いていると、一台の車が寄ってきて、なにか喋りかけてきました。よく聞き取れず、近づいた瞬間、反対側のドアから何人かの男たちがおりてきて、いきなり襲われたことがあります。

その時には、反対車線に逃げて、助かりました。

ただ、それ以来、歩道を歩く際には、対向車を視野に捉え、また後ろから人や自転車などが来る際には、距離感を考えて、常に周囲の状況を見る習慣ができました。必要に迫られて『認知』が上がった感じでした。常に周囲に気を張るので、緊張感はありましたし、周りの細かい変化に気づくことも増えました。

自分の位置から考える

日常生活で周りを見ることが、日本での生活でどのくらいあるでしょうか?駅の看板を見る、や何かを見つけることはあっても、周囲の状況を確認する、認知に近いことはあまり多くないように思います。

サッカーと日常生活での認知がどこまで関係があるのかは明言できませんが、周囲の状況に対してアンテナを張ることは良いことにはなるはずです。自分のものに対しての注意力も含め、自分のボールを大切にする(試合でも私生活でも)ということにも少なからず関係があると思います。

以前に働いていた、元アルゼンチン代表の選手だった方が指導していたチームでは、出来るだけ会場が見渡せる場所に荷物を置いていました。

また、その方は自分の椅子をさらにいい位置につけ、常に周囲の状況を見ていて、会場にいるチーム、選手、保護者のことを観察していました。そこから対戦相手であればどの選手が中心か、どの監督のウォーミングアップが特徴的で、どんなサッカーかなのか?までも見抜いていました。特に自分の後ろに人が立つことを嫌がりました。

スクールの最中でも、子供たちだけでなく、周囲に目を配ることで、様々なことに気付けることを教えてもらいました。

日常をサッカーに紐づける

日本にいながらこうした習慣を身に付けることは簡単なことではありません。

一つはそれだけ、海外の環境によっては感覚面での研ぎ澄まされ方が違うということ。またもう一つにそれを踏まえて、どう渡り合っていくべきなのかを、考えていくことが本当に大切なことです。

本人の自覚意識だけで変わるのであれば一番いいですが、指導者たちが、常に周りをみることの大切さを伝えていく、喚起することで習慣に近づくことができると思います。

 

これって実はサッカーのここにつながるんだよね?という一言で子供の意識は高まるはずです。

二田水 晶