
夏場の練習で効率的に伸びるのか?
記録的な猛暑と言える今年の日本の夏。
ワールドカップを終え、結果として日本サッカーが盛り上がって(た?)なかバラエティー番組に日本代表として活躍した選手がよく出ていたりします。そのほとんどが海外でプレーする選手たちばかり。なぜならJリーグは再開しているので、テレビにでる暇などもちろんない。
反対にヨーロッパのリーグはこの時期はしっかりとシーズンオフを挟んでから徐々にトレーニングやトレーニングマッチを重ねて調整しています。国内組の選手たちは休めているのか?疲れが溜まってケガをしないのか、気になります。
Jリーグのシーズンの問題はさておき。
『オフ』
はたしてこの意味を、大切さを日本の指導者はどの程度理解しているのか、考えることが多々あります。
サッカーに限らず、アスリートがパフォーマンスを上げるために必要なことにトレーニング、食事、休息があるということを以前にも書きました。
長いシーズンを戦い終えてから、心身ともにリフレッシュする事で、モチベーションを新たに高め、ケガのリスクを減らすことにもつながります。また、長い休みだけでなく、練習や試合のあとのオフにこそ、トレーニングの効果を得る時間となります。
普段の状態を超える負荷をかけてトレーニングをすることで身体にダメージを与える負荷(オーバーロード)をかけます。身体はこのダメージに対して、筋肉や様々な器官を守ろうと回復する、だけでなくこの負荷に耐えられるように、以前よりも強い身体になるべく、超回復をする。
トレーニングの24-48時間の休息を挟むことで超回復を起こし、パフォーマンスの向上につなげます。
この過程を繰り返すことでトレーニングの効果が蓄積、レベルアップします。しかしながら激しいトレーニングを繰り返し行うばかりで、十分な回復をする時間、休息を挟まないと、筋肉を壊すばかりで、当然の結果としてケガにもつながります。
また、疲れた状態でトレーニングすると、本来のパフォーマンスよりも落ちた質、60%や80%での動きになります。また脳も疲れた体を守ろうと、パフォーマンスを無理やり上げないように制限をかけてしまいます。
成長期の子供においては過度な練習による成長痛は深刻な悩みです。
結果として、トレーニングを沢山やっても、疲労感は溜まり、ある種の精神的で迷信的な達成感を得ることはできるが、質がいいものとは決してならない。
夏場に盛り沢山の日本スポーツ
サッカーの高校選手権や、全日本少年サッカー大会、高校野球もしかり、選手の体を考えて大会日程を組んでいるのではなくスポンサーやメディア向け、というのはもはや周知の事実。
高校選手権に至っては、日程表を見た海外の超有名育成コーチが『これは酔っ払いが作った日程か?』と話したという有名な話もある。
本来パフォーマンスを高めるために、強豪チームがしのぎを削る場であり、そこでの切磋琢磨が、これからの各選手にとって重要な経験になる場であるはず。
であれば、なぜ夏場にこのような大会がひらかれるのか?合宿においてもしかり。一年で一番暑い夏に、ここぞとばかりに選手を追い込みつらくてキツイ状況を作り込み、耐えることでの達成感や、根拠なき精神論を叩き込むことが、本当にその選手のためになるのか?
ドイツなどではシーズン開幕前のキャンプも、やらないチームも増えています。それはプロだから?
子どものころから一つのスポーツを朝、昼、晩とやることが本当に意味はあるのか?アメリカはシーズンにあわせて競技種目を変えてプロになれるアスリートがたくさんいるし、そうした環境もできている。
ヨーロッパにおいて夏はオフ
ドイツ留学時には長い夏休みに、サッカーをできない歯がゆさも感じましたが、これ以上ないほどリラックスできたことを覚えています。
長い休みの理由の一つに、夏場のパフォーマンスが落ちるから、という話もある。
夏場のサッカーの試合では、暑さから走行距離は減り、パスの本数や成功率も落ち、プレーイングタイムも減るという。(アウトオブプレーになったときにゆっくり始めたり、水を飲んだりするため)
パフォーマンスを向上するには、トレーニング中やゲーム中に自分の持っている力を101%出すことで、本来の自分のパフォーマンスを徐々にあげていきレベルアップすると考えられている。
そのため身体的にコンディショニングを整え、選手の能力を引き出すように指導者はトレーニング方法、時間、場所、内容を考える。しかしながら、この炎天下の中ではそうはいかない。日常生活でさえ、暑くて嫌になるような暑さ、その中で果たして本当に101%を出すことができるのだろうか?
暑さになれることは大切、でもこうも過酷な状況下での練習や大会については、せめて時間をずらしたり、試合時間を短くしたり、試合数を調整していくことが大事だと思います。
暑くて頭もまわらない状況でプレーし、判断や認知の間違いから、技術的なミスを繰り返す。その度に怒られ、負けたら監督に追い込まれるから、必死にやる。
とにかく何試合もこなして、ばてない体力を!
ではなく、本人の成功体験や成功したいという欲求、自主性、主体性からプレーの強度を上げる。
そして、それを育める環境を指導者や大会を運営する側は考慮して、安全に健康に、そして理論的に、効率的にスポーツができるようになることを願います。
育成年代のサッカーで勝てたはずなのに、年代が上がると差が逆転されて広がります。練習量では負けてないどころか、絶対に負けてないし、休んでもいないのに…。
うまく休むこと、休むことへの理解を深める。
日本と世界の差を、競技レベルではなく、環境に合わせて、文化としてのスポーツの価値を再構築する時期が来ていると感じます。
二田水 晶