2018-06-09
育成

サッカーにおける日本の常識と海外の常識の差、練習の質と量について

どんなサッカーの練習においても、やってはいけない、やっても無駄な練習はないということを大前提に進めます。

そこで重要なのが、量と質。

どんな非効率な練習も量をこなすことで形にはなるし、得るものは時間相応にある。けれどもサッカーという観点から見た場合に、それはイコールでは絶対にない。もちろん時間と量における単位、向上する部分も多くある。反面、そのリスクの大きさは計り知れない。

指導者や保護者の方々はサッカー先進国に比べて、日本の子供たちのサッカー離れは年を追うごとに大きくなっているのは、気づいていますでしょうか?※ここでいうサッカー離れとは、中学、高校、大学と学年が上がるにつれてサッカーをやめてしまう子の多さについてです。その多くに体育としてのサッカーに対する美徳が往々にしてあります。

やればやるだけうまくなる

部員が多いのに顧問や担当が少ない中で、軽はずみなボトムアップ論や自主性に任せた指導(※ボトムアップはきちんと実践できれば素晴らしい手法の一つになります)では、本質的に求められるサッカーレベルには程遠いです。(指導環境についてはひとまず置いて)

それを補うためになにか?長時間の練習、朝練、合宿、夏場のきつい時期に何試合も組んで試合を行う。

短期的にみて、これらの手法は、体力もつくし、技術が向上するようにも見えます。実際に強豪と呼ばれる多くの日本のチームは練習量も多いです。また育成年代と呼ばれるカテゴリーでは、世界と比較してもいい結果(?)を残していることが多々見受けられます。これはこれでいいことのように思えます。

世界との差が広がる16歳以降の日本

…が、問題はそこから。

15歳から段々と世代が上がるごとに、海外の選手は持ち前の身体能力が飛躍的に向上し、また戦術的な部分はもちろん、技術は日本人もあるといわれている部分でも上回れてしまいます。海外のクラブのやり方を見ても、日本とは明らかに違う、練習の内容、質と量が大きく関係しているように思えてなりません。

海外の育成年代では週に2から3回の練習に、週末は1試合。ミッドウィーク(水曜などの平日)に1試合あることも時期としては稀にあります。この程度の活動しかしておらず、かといって居残り練習や朝練などはありません。合宿も大会の遠征以外には過度なトレーニング目的はほとんどありません。(ドイツでのベルダーブレーメンのユース時代、僕自身体力をつけたいと、練習前に走っていたら、監督に止められ、練習の中で走りなさいと注意されました。)

日本の高校の時の練習が一番きつかったと語る選手が多いのは美徳ではなく、ズレだと感じてしまいます。人間の脳はきついと思う作業(あえて作業とします)を行うほどに、そこに意味や意義を見出し、努力を評価できる対象を探そうとします。これだけやったのだから、きっと意味がある。

量ではなく質がもたらす心と体の安定

 ヨーロッパの根本的な考え方として、やればやるだけいいのではなく、必要なことを必要な分だけ行うことにとても重点が置かれています。それはサッカー150年という歴史の中からクラブや指導者が導き出した統計的なものからも導かれています。適切な練習量のもとでは、もっと練習したいという欲求がたまり、単純に練習に行くのが楽しみで仕方ないという気持ちになります。

今日も疲れてるのに、きつい練習だ、いやだな…なんて思ったことはありません。

体力的にも回復した状態で行えることでケガのリスクも少ないですし、同時に気持ち的にもリフレッシュしている状態なので、監督の言わんとしていることが理解しやすい状態でトレーニングに臨めます。モチベーションも高いです。

相手や仲間が複数絡みルールなどで条件付して行うグローバルメソッド(詳しくはまた別で)やシステミコ、インテグラルトレーニングを多くしていくと、このリフレッシュした状態で臨まないと、練習の意図、コンセプトは理解できない、もしくは体現できなくなってしまいます。これらのトレーニングには日本人には苦手(拒絶反応の強い?)な戦術的な要素が多く含まれていて、頭を常に働かせていく必要があります。

相手のいない単純な練習を反復していく、長時間行うことでは獲得できない状況の認知、判断が求められています。そしてこれらの練習は単純にやればいいのではなく(やってダメなことはありませんが)チームの意図する戦い方や方向性(プレーモデル)が関わるので、相対的なサッカーの知識とチーム状態や対戦相手の分析が求められます。

練習一つ一つの強度も高い(心拍数も上がる)なかで行うので、長時間できないです。
長めにやってみると、選手たちの判断能力が落ちて、プレー精度が明らかに落ちます。
この状態で続けることも一つですが、100%の状態でプレーしてこそ101%を出して能力の向上を図れます。

多くのチームであるように、長時間、また何日も続けていくと、疲労を感じた脳が体を守ろうと自己防衛するために、無意識下で手を抜くようになります。60~80%の力でのプレーになってしまいます。結果これを繰り返してもなかなか能力の向上を図ることができません。長くダラダラしてしまい、メリハリがありません。

そしてこれが何年にも渡り行われてしまうと、成長期ですと成長痛などのスポーツ障害、オーバートレーニング症候群になってしまいます。またそこまでの症状にはいかなくても精神的にも肉体的にも疲労がたまり、燃え尽き症候群になってしまい、サッカーから離れていくことにつながってしまいます。

目先の勝利ではなくその子の将来を考えた指導を

トレーニング、試合の一つ一つの価値、意義を見直し、適正な時間で行うことで、子供たちがサッカーも楽しめ、他のことも楽しめ、好きだからこそ、もっとやりたいというサイクルができるはずです。トレーニングの中での選手のインテンシティをもっと求めてみてください。お互いがハイプレスで体を張りつつ、攻守の切り替えが早い中で、練習を試合に近い状態で行えば、自ずとレベルが上がります。

トレーニングの質が上がることで日本のサッカーのレベルもあがる。

日本にプロサッカーリーグができて25年。海外では当たり前の環境、当たり前の認識、サッカーの常識が日本においては足りてないように思えてなりません。まだまだ海外から学ぶべきことは多いはずです。6月から始まるワールドカップで世界のサッカーがどのように展開されていくのか、いまから楽しみです。

二田水 晶